「いま求められるニュース読み&実況講座」
- 原元美紀
- 2017年10月29日
- 読了時間: 5分
「原元美紀の女子アナワークショップ」、10月は「いま求められるニュース読み & 実況」講座でした。
今回は参加者のほとんどが地方から駆けつけてくれて、しかもアナウンサーだけではなく、女性記者や女性ディレクターも!
放送現場で働く若手の皆さんの「最新のニュース読み」を学ぼうとする姿勢に感動しました。

(写真は掲載OKの方のみ)
さて、私たちの現場では「ニュースを読む」とは言わずに、「伝える」という言い方をします。
その違いは一体なんでしょうか?
ただ綺麗に音読するだけだったら、もうAIに仕事を奪われてしまします。
実際、下手なアナウンサーよりもよほど上手に読むニュースアプリも登場しました。
それに、綺麗に間違えずに原稿が読めるからといって、聴き手に伝わるかといったらそうではありません。(上手いに越したことはないですが)
そこで、「そもそも、ニュースとは?」というところから講義をしました。
・ニュースの語源
・放送法の歴史
・ニュース原稿と他の文章との違い
・ニュースで大事なトコロ
・ニュースバリューとは
など
局アナとして入社したら新人研修で習うかもしれませんが、最初からフリーアナウンサーとして活動しているとなかなか習う機会もないので、実は、「初めて聞いた」という人も少なくありません。
でも、これらの知識があると、ニュースに何を求められているのかが理解できるのです。
私の場合は、CBC中部日本放送で受けた新人研修、フリーになってからは日本テレビの久能 靖さんや清水 潔さん、NHKの松平定知さんといった素晴らしい先達に師事する機会がありました。
また、民放労連の講師を務めるようになって、各局の生き字引き(!)のような先輩方からお話を伺う機会が常にあるという幸運な立場にいます。
私が諸先輩方から受けた教えを若い世代の皆さんに繋がせてもらえたらと願っています。
さて、いまのニュースがどうしてこのような形になっているのかを踏まえた上で、今度は、各局の原稿の特色を比べてみました。
同じニュースを取り上げても、NHKと民放各局ではそれぞれスタイルが微妙に違います。
たとえばタイトルが違っていたり、主語を何にするかが違っていたり。センテンスの長さも違います。
比較をするからこそ、一つのニュースに対し、多角的な視野でとらえ、伝え手として中道を歩めると思うのです。
実際のニュース原稿を使って、「従来のアナウンサー読み」と違う「いま求められるキャスター読み」に挑戦してもらいました。
「間違えずに正確に」だけでは、何を読んでも一本調子になってしまいます。
内容にふさわしい「信頼される伝え方が出来る存在」を意識して挑戦です。
座って読んだり、
立って読んだり。
それぞれでコンセプトが違います。
皆さん自分なりに身振り手振りで生き生きと伝えようとチャレンジしていました。
そして、最近特に増えているニュース実況の練習にも取り組みました。
テレビニュースは速報性が大事です。
「ニュース原稿が無いけど、現場の映像だけ届いたから、画面見ながらなんか喋って!」
アナウンサーならこんな場面に遭遇することを想定して日々備えていなければなりません。
私は日本テレビのニュース専門チャンネル「日テレNEWS24」キャスターを5年務めていましたが、速報は週に2、3回ペースで飛び込んできて、最長で原稿ナシで6時間喋ったことがあります(!)
なぜそれが可能だったかというと、「ここを押さえるべし!」というポイントに気づいたからなのですね。
今回のワークショップでは、速報でよくあるケースとして、地震、火災、台風、といった自然災害、
容疑者逮捕、通り魔、立てこもりといった事件、車の追突などの事故、他に受賞発表、ロケット打ち上げなど、どのような点について実況すべきかをお話ししました。
そして、実際に起きた火災のニュース映像から実況練習をしてみました。
皆さんほとんど初めての経験で、やってみるとなかなか言葉が出てきません。
出てこない理由としては、
・ニュースという公的な場面で実況するのにふさわしいボキャブラリーが足りない
・画面のどこに注目すべきか分からない
・画面に映っていいないものが想像できない
・この後の展開が予想できない
などでしょうか。
これらは普段意識して学ぼうとしているかどうかの姿勢で決まります。
そして学んだことが反射的にスラスラ出てこないと話になりません。
とにかく平時の過ごし方が鍵です。
「アナウンサーが読めないと困るニュース用語集」も配布したので、皆さんには普段から頑張ってもらえたらと思います。
こんな感想が寄せられました。
*速報の際、画面の映像を実況するスピードについていけず、もっと瞬発力や頭の回転をもっと速くしないといけないなと反省しました。
*「読み手ではなく、キャスターとしての信頼感を与える」という先生の言葉に非常に納得しました。
私も、今後ニュースを担当するかもしれません。
この人になら任せられる!と思われるよう、訓練を積みたいと思います。
*原稿を読み始めると間違えないように読まなくてはとどうしてもそちらに集中しすぎていました。
信頼してもらえる、この人ならと思ってもらえるそんな存在感が出せるよう、日々勉強し、情報を届けていきたいです。
いろいろ偉そうに語りましたが、実は私は局アナの4年間はニュースを担当させてもらえませんでした。
私、失敗が多かったので(泣)
だから出来ない人の気持ちがとてもよく分かるのです。
何が分からないかが、よく分かります。
悔しい気持ちもよく分かります。
昔の自分と同じだから。
でも、絶対ニュースキャスターになりたい!
と諦めずにコツコツ努力していたらきっといつか夢をつかめると思うのです。
私に出来たのだから、皆さんにも出来ると思うのです。
情熱を持って頑張ってくださいね。